肝癌診療ガイドライン

 

第3章:手術

はじめに

近年,肝切除の安全性が著しく向上した。日本肝癌研究会による25年前の全国調査では,原発性肝癌における肝切除症例の手術死亡率は27.5%,5年生存率は11.8%であったのに対して,最新の第16回調査(2000〜2001年)では手術死亡率は0.9%,5年生存率は54.6%と飛躍的に改善した。この成果は,術前評価,手術手技,周術期管理などの総合力によってもたらされた。

手術適応の決定には,肝細胞癌の進行度評価や肝機能評価が必須である。進行度は腫瘍の大きさ,数,血管侵襲,リンパ節転移,遠隔転移の有無によって規定される。肝機能からみた適応評価では,より簡便に,より高精度の基準が提唱され,一般化している。術式においては,腫瘍根治と肝機能温存の両面から妥当と考えられる手術法がわが国からいろいろ開発されてきた。近年では,これに肝移植(生体)というオプションも加わった。周術期管理の知識も増し,肝不全や術後感染症などの致死的合併症の頻度も減少している。

そこで,肝切除術の適応,術式,予後因子,周術期管理,補助療法の5項目について2001年までのエビデンスをまとめた。

文献の選択

肝細胞癌,手術,英文原著論文,1980〜2001年の4つのキーワードによりMEDLINE(Dialog system)を使って915編を検索し,1〜3次選択を経て信頼度の高い論文100編(11%)を選択した。

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第3章:手術

第1節 手術適応・術式・再発補助療法

Research Question. 21

肝切除術における最良の術前肝機能評価因子は?

推奨

ICG 15分停滞率は術前肝機能評価因子として有用である。特に術後死亡の予測因子として優れている。

(グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

術後合併症の有無とICG 15分停滞率,アミノ酸クリアランス試験,アミノピリン呼気試験に有意差は認められなかった。しかしながら術後死亡例をこれらの検査と従来の肝機能検査で検討してみると,術後死亡例では,ICG 15分停滞率,T-Bil,ALP,γ-GTP,ALTが有意に高値で,なかでもICG 15分停滞率が術後死亡の最も優れた予測因子であった(LF00441 1), Level 2a)。

また99mTc-GSA肝シンチグラフィーは,組織学的肝障害の評価においてICG 15分停滞率よりも優れているとの報告もある(LF00457 2), Level 4)。

【解 説】

従来からのChild-Pugh分類や肝機能検査に加え,肝予備能試験としてのICG 15分停滞率,アミノ酸クリアランス試験,アミノピリン呼気試験,99mTc-GSA肝シンチグラフィーなどが報告されている。しかしながら術前肝機能評価因子のみを論じたエビデンスレベルの高い報告は少ない。

ICG 15分停滞率は術後死亡の予測因子として有用であるが,組織学的肝障害の評価においては注意を要する。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第1節 手術適応・術式・再発補助療法

Research Question. 22

小肝細胞癌に対する有効な治療法は?

推奨

肝機能良好で単発の小肝細胞癌に対しては外科的切除が推奨される。

(グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

3 cm以下の小肝細胞癌では多発性(LF00831 1)Level 2b),外科的切除(LF00720 2)Level 2b)が予後に影響を及ぼす因子であった。肝切除,PEI,TAEの治療成績を検討すると,肝切除とPEIは3年まではほぼ同等の治療成績であったが(1年生存率90%以上,3年生存率70%),TAEに関しては1年生存率こそ前二者と同等であったが,その後の生存率は低下していた(LF00831 1)Level 2b)。

日本肝癌研究会の追跡調査では,2 cm未満の単発ではclinical stage I(現行liver damage A)の症例,2 cm以上5 cm未満の単発症例ではclinical stageに関わらず,肝切除がPEI,TAEよりも治療成績良好であった。また2 cm以上5 cm未満の腫瘍が2個存在するclinical stage IIの症例においても同様に,肝切除の方が成績良好であった(LF00178 5)Level 2b)。

5 cm以下の小肝細胞癌では,術式(部分切除,葉切除)による生存率の差は認めなかったが(LF00885 3)Level 2b),単結節周囲増殖型の小肝細胞癌に関しては,系統的肝切除術の方が部分切除と比較し5年生存率は有意に良好であったとの報告もある(LF00102 4)Level 2a)。

【解説】

小肝細胞癌は肝機能,腫瘍占拠部位を考慮した治療選択が重要である。

外科的切除は,2 cm以上5 cm未満の単発症例に推奨されるが,2 cm未満の単発症例でも肝機能良好であれば(clinical stage I=現行liver damage A),外科的切除が推奨される。術式では残肝機能を考慮した部分切除でも十分との報告もあるが,単結節周囲増殖型の小肝細胞癌に関しては系統的肝切除術が推奨される。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第1節 手術適応・術式・再発補助療法

Research Question. 23

非硬変肝細胞癌に対しmajor resectionは必要か?

推奨

治癒切除が可能であれば必ずしもmajor resectionは必要としない。

(グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

非硬変肝細胞癌を対象に広範囲肝切除と小肝切除を比較した論文(LF00265 1)Level 2b)では両者の出血量,合併症,生存率,無再発生存率に差は認められない。硬変肝を含めた検討(LF00885 2)Level 2b),さらに肝硬変合併肝細胞癌のみを対象とした検討(LF00992 3)Level 2a)でも両者の術後生存に差は認められない。

【解説】

10 cm以下の非硬変肝細胞癌を対象に広範囲肝切除(two Couinaud's segments以上;n=25)とそれ以下の小肝切除(two Couinaud's segments未満;n=33)を比較した論文(LF00265 1)Level 2b)では両者の出血量,合併症,生存率,無再発生存率に差は認められず,切除範囲による予後改善への寄与は少ないものと考えられる。さらに硬変肝を含めた5 cm以下の肝細胞癌を対象とした検討(LF00885 2)Level 2b)でも術式(Lobectomy; n=43 v.s. Limited resection; n=89)による術後生存への影響は認められない。肝硬変合併肝細胞癌のみを対象とした検討(LF00992 3)Level 2a)でも死亡率,術後生存に差は認められなかった。以上の観点から現時点では非硬変肝,硬変肝に関わらず肝細胞癌に対する拡大切除の意義は少なく,肝機能と腫瘍の進展を考慮したうえで治癒切除が可能であれば小範囲切除が妥当と考えられる。

ただし,これまでの報告はすべて後ろ向き研究であり,術式の選択について前向き研究の報告はない。また報告により対象症例の背景(肝機能,腫瘍進展など)や術式に差がみられる。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第1節 手術適応・術式・再発補助療法

Research Question. 24

再発肝細胞癌に対する有効な治療は?

推奨

保存的治療に比べ再肝切除例の予後は良好であり,特にChild A,単発症例では再切除が推奨される。

(グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

再発肝細胞癌に対する再切除例の予後は,非再切除例に比較して有意に良好と報告されている(LF00505 1)Level 2b)。同様な術後再発肝細胞癌を対象とした検討(LF00926 2)Level 4)でも,再切除例が他の保存的治療に比べ予後良好としている。再発肝細胞癌の予後因子として残肝機能,腫瘍数,再発までの期間,肝外病巣の有無,治療法(再肝切除)が,独立した予後因子として報告されている(LF00243 3)Level 2b)。

【解説】

再発肝細胞癌に対する再切除術に関する論文(LF00505 1)Level 2b)では,再切除例(n=50)で非再切除例(n=117)に比較して有意に予後良好と報告されている。また再切除による手術死亡率の増加は認められないが,Child B,C,術中大量出血が手術死亡に関与したとして,積極的な再肝切除の適応として肝機能良好(Child A)な単発例が推奨されるとしている。同様に術後再発肝細胞癌(n=41)を対象とした検討(LF00926 2)Level 4)でも治療法別の予後の比較で,再切除例が他の保存的治療に比べ予後良好としている。再発肝細胞癌の予後を多変量解析を用いて検討した論文(LF00243 3)Level 2b)では残肝機能,腫瘍数,再発までの期間,肝外病巣の有無,治療法(再肝切除)が独立した予後因子として報告されている。以上より現時点では,肝外病巣を認めず,肝機能良好で腫瘍が比較的限局していれば,治療の第1選択として再切除を考慮するのが妥当と考えられる。

ただし,再発肝細胞癌に対する治療選択については「再切除」と「他の保存的治療」を比較した後ろ向き研究が多く,対象症例の肝機能や腫瘍数など条件を揃えたうえで,個々の治療法による成績を比較したRCT studyの報告はない。これまでの報告にある再切除例の多くは肝機能良好な単発症例である。また再発肝細胞癌に対するRFA(radiofrequency ablation)はその長期成績がまだ報告されていない。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第2節 予後因子

Resaerch Question. 25

肝切除後の予後因子は何か?

推奨

肝切除後の予後因子はStage分類,脈管侵襲,肝機能,腫瘍数などである。

(根拠の強さ:グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

肝切除後の生存率および無再発生存率において腫瘍径,腫瘍数,被膜形成,脈管侵襲,肝機能,臨床病期によりサブグループ化した検討では,腫瘍径5 cm未満,単発,被膜形成あり,脈管侵襲なし,血清アルブミン値40 g/l未満,pTNM stage I・II が予後良好で,このうちpTNM stageが最も信頼できる予後因子である(LF00073 1)Level 2a)。また,無再発生存率の検討においてStage分類,腫瘍径,腫瘍数,被膜形成が有意な予後因子として前者と同様であるが,このうち術後の全期間を通して生存予後に関与するのは脈管侵襲としている(LF00777 2)Level 2b)。腫瘍径に関しては予後に影響しないとする論文(LF00623 3)Level 2bLF00853 4)Level 4)もあり,見解が一致していない。また,2 cm以下の腫瘍においては,早期肝細胞癌の生存率が良好である(LF00378 5)Level 2a)。

【解説】

肝細胞癌,手術をキーワードに調べた英文原著915編(1980〜2001年)のうち,予後因子に関する論文は161編で,このうち信頼度の高い24編を検討すると,脈管侵襲を有用とするものが最も多く(67%),次いで,肝機能(29%),Stage分類(21%),腫瘍径(21%),腫瘍数(17%)である。肝機能ではChild分類や血清アルブミン値を有用とするものが多い。腫瘍径に関しては予後に影響しないとするものが25%あり,見解が一致していない。Stage分類のうちStage 0とされる早期肝癌の生存率は良好で,早期肝癌は予後因子ともいえる。このほか,被膜形成,衛星結節も予後に有意とする論文が散見される。一方,肉眼分類,肝硬変,切離断端距離は有意でないとする論文が多い。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第2節 予後因子

Reserach Question. 26

切除断端距離は予後に寄与するか?

推奨

肝切除において肝切離断端距離は必要最低限でよい。

(グレード B)

【サイエンティフィックステートメント】

肝切除断端の距離が1 cm以上と1 cm未満の2群において術後再発率に有意差を認めない(LF00128 1)Level 2aLF00777 2)Level 2b)。肝切除断端の距離を5 mm以上と未満で分けた比較検討でも術後再発率に有意差を認めない(LF00623 3)Level 2bLF00728 4)Level 2b)。また,葉切除以上の拡大切除と縮小手術とを比較した報告でも生存率に有意差を認めない(LF00033 5)Level 2b)。

したがって,切離断端距離は予後に寄与する可能性が低い。

【解説】

肝細胞癌,手術をキーワードに調べた英文原著915編(1980〜2001年)のうち,予後因子に関する論文は161編で,このうち信頼度の高い24編を検討した。切除断端距離について予後を検討した論文は8編で,検討した距離を10 mmとした論文が4編,5 mmとした論文が4編であったが,いずれも予後に影響していない。したがって,肝細胞癌の肝切除において,腫瘍縁から5〜10 mmの距離をとって切除すればよいと考える。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第2節 予後因子

Reserach Question. 27

系統的切除は予後に寄与するか?

推奨

肝切除では系統的に行うことが推奨される。

(グレード B)

【サイエンティフィックステートメント】

5 cm以下の肝細胞癌において後ろ向き研究で,系統的切除が部分切除に比較して生存率に優位性を示し,特に結節外転移を示す症例に有意差を認める(LF00102 1)Level 2b)。無再発生存率の検討も同様に,系統的切除が部分切除に比較して優位性を示す(LF00253 2)Level 2b)。しかし,肝硬変がなく,浸潤のない腫瘍のみにおいて無再発生存率に相違を認めるとの報告もある(LF00728 3)Level 2b)。

以上から,系統的切除は予後を向上させる可能性が高い。

【解説】

最も重要な予後因子に門脈侵襲がある。一方,腫瘍断端の距離に予後は影響しない。したがって,腫瘍の局在領域を支配する門脈の走行を考慮して,肝切除をすべきである。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第3節 周術期管理

Resaerch Question. 28

周術期の血液製剤(赤血球輸血,凍結血漿など)使用はどうするか?

推奨

同種赤血球輸血はできるだけ避ける。

(グレードB)

凍結血漿の使用を推奨する。

(グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

肝切除術周術期の同種輸血はできるだけ避けるべきであるという報告が多い(LF00690 1)Level 2bLF00453 2)Level 3)。その理由は,癌の再発を促進する可能性,高ビリルビン血症や肝不全をきたしやすい,ヘマトクリット値が低い方が肝の微小循環に望ましい,などが挙げられている。一方で輸血の有無により再発率は変わらないという報告もある(LF00031 3)Level 3)。

同種赤血球輸血を回避するため自己輸血(術中回収血を含めて)は安全で,癌の再発を高めることなく,有効であると報告されている(LF00710 4)Level 3)。

肝切除時の凍結血漿の使用はこれを支持する論文が多い(LF00917 5)Level 3)。しかし,高いエビデンスに基づいた検証はない。

【解説】

一般に輸血のない手術が推奨されるのは論を待たない。特に癌の手術において,輸血の有無が問題になるのは,輸血による免疫抑制状態導入の可能性が考えられるからである(Opelz et al, Improvement of kidney graft survival with increased numbers of blood transfusion. N Engl J Med 1978)。輸血による免疫抑制状態が導入され,癌の再発が促進されることは容易に想像できるストーリーである。輸血の有無による再発率の違いはさまざまな癌の手術において報告されているが,再発率に差がないという報告も多い。

手術において無輸血で周術期を乗り切るため最低限維持すべきヘマトクリット値に関しては,循環動態が保たれる限り20%までの低下は受容できると報告されているが,エビデンスの高いデータではない(LF00917 5)Level 3)。

肝切除における新鮮凍結血漿の使用は,厚生労働省による「血液製剤の使用指針」では医療経済,医療資源上の理由から推奨されていないが,臨床経験上推奨される(LF00917 5)Level 3)。その意義は凝固因子の補充や有効血漿量,血漿浸透圧の維持,感染防御能の強化である。使用量の目安は凝固因子の最低量の維持である。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第3節 周術期管理

Resaerch Question. 29

肝切除術において術中出血量を減少させるにはどうするか?

推奨

肝流入血流遮断は有効である。

(グレードA)

CVP圧を低下させることは有用である。

(グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

Man Kらは,連続した100人の肝切除患者をランダムに間欠的肝流入血流遮断法のありとなしの群に分け,前者で有意に術中出血量の減少を確認した(LF00434 1), Level 1b)。また,片葉阻血法の有効性を示す報告がある(LF01862 2), Level 2b)。

肝切除術中のCVP圧が5 cm水柱以上群と以下群を比較すると前者に出血量,輸血量が有意に多かったと報告されている(LF07156 3)Level 3)。CVPを5 cm水柱以下に低下させることは有意に肝切除の際の出血量を減少させ,それに伴う合併症も認めないとの報告もある(LF07157 4)Level 3)。また,術中出血量を減少させ,同種輸血を回避する方法としてisovolemic hemodilutionを推奨する報告があるが,脱血などの処置を伴うため安全性についての詳細な検討とその有効性の一層の検討が必要である(LF07159 5)Level 3LF07155 6)Level 3)。

【解説】

肝切除中の出血を減少させるために間欠的肝流入血流遮断(プリングル法)が広く行われている。本法の臨床における安全性も認められている。切除部位が片葉内に限局される時は片葉阻血法が薦められる。

肝切除術中の出血の多くは肝静脈由来である。したがって,下大静脈の中心静脈圧を下げることには妥当性があるが,CVPを低下させる方法および安全性に対する検討も今後必要となる。isovolemic hemodilutionは大量出血が予想される手術で同種輸血を回避する有効な手段であるが,血液の希釈や脱血などの複雑な操作が必要であることが欠点である。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第4節 補助療法

Resaerch Question. 30

術前補助療法は肝細胞癌肝切除後の予後を改善するか?

推奨

肝細胞癌肝切除後の予後改善を目的とした術前補助療法として推奨できるものはない。

(グレードC2)

【サイエンティフィックステートメント】

肝動脈塞栓療法の合併症罹患率は低く,単回では肝機能の低下もわずかである。術前補助療法として肝動脈塞栓療法は腫瘍壊死や縮小効果があり,進行肝細胞癌で切除率を向上させる可能性はあるが,予後改善効果については一定の見解は得られていない(LF00018 1)Level 4LF00142 2)Level 3LF00373 3)Level 2b:有効,LF00350 4)Level 2bLF00497 5)Level 2bLF00537 6)Level 1b:無効)。

【解説】

術前補助療法として,動脈塞栓術,門脈塞栓術などが施行されている。術前肝動脈塞栓療法についてエビデンスレベルの高い論文もあるが,現在のところ,その予後改善効果については有効との報告と無効との報告が併存するため,術前補助療法としては推奨しなかった。また,術前門脈塞栓術の報告もあるが,群間の背景因子が異なるため推奨しなかった(LF00138 7)Level 2a)。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第4節 補助療法

Resaerch Question. 31

術後補助療法は肝細胞癌肝切除後の予後を改善するか?

推奨

再発抑制効果や生存率の向上のために推奨できる術後補助療法はない。二次発癌予防として有効と報告されている補助療法はあるが,推奨するまでには至っていない。

(グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

術後全身化学療法について,肝機能良好例では有用であったとの報告がみられるが,逆に肝機能を悪化させ予後が不良となったとの報告もあり,一定の見解を得るには至っていない(LF00032 1)Level 1a:無効,LF00351 2)Level 1b:無効,LF00502 3)Level 1b:肝機能良好例に有効)。また,動注化学療法の効果についていろいろなプロトコールが試みられており,なかには進行肝癌で予後が改善できたとの報告もあるが,一定の見解が得られていない(LF00319 4)Level 2b:有効,LF00522 5)Level 1b:無効)。 2次発癌予防としてのインターフェロン-α療法(LF00013 6)Level 1b),術後再発予防としての養子免疫療法(LF01855 7)Level 1b)により再発が抑制されたとの報告があるが,生存率を有意に改善するまでには至っていない。またacyclic retinoid(LF01582 8)Level 1bLF02249 Level 1b)により再発が抑制され生存率が改善したと報告されている。131-I-lipiodolの肝動脈内投与が再発率を減少させ生存延長に有効との報告があるが(LF00316 10)Level 1b),本邦での施行については放射性同位元素の取扱い規制から困難と考えられる。それぞれの報告は異なる治療法の少数例の比較試験であり,現段階では術後補助療法として推奨するまでには至っていない。分枝鎖アミノ酸長期投与は生存率の改善効果はない(LF00440 11)Level 1b)。

【解説】

術後補助療法についてはエビデンスレベルの高い報告があり,下記の参考論文はLF00319 4)Level 2b)を除きランダム化比較試験である。

術後の抗癌剤による化学療法は,投与経路として全身化学療法と肝動脈動注化学療法が行われている。しかし,投与経路に関わらず結果は一致していない。今後,有効との報告のあるプロトコールの検証が必要である。

2次発癌予防としてこれまで4件のランダム化比較試験で有効との報告があり,期待される治療法である。しかし,それぞれが少数例のランダム化比較試験の単報であり,今後これらの報告に基づき大規模な比較試験による検討が必要であると考えられる。なお,131-I-lipiodolの肝動脈内投与は短期予後の改善が報告されているものの,その後の長期経過については報告されておらず,放射性同位元素の使用に厳しい制限のある本邦では推奨する治療法にはならないと考えられる。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第5節 肝移植

はじめに

肝細胞癌に対する肝移植は,1980年代に切除不能な腫瘍に対して行われた結果,そのほとんどの症例が数年以内に再発死亡した経験から,多くの肝移植施設が肝細胞癌症例は移植の適応外としてきた。1990年代に入り,従来は肝切除のよい適応とされてきた比較的小さな少数個の肝細胞癌症例に対しては,移植後の長期成績が良性末期肝疾患に対する移植後の成績と同程度であることが明らかにされ,現在では肝機能条件により切除不能な肝癌に対しては,腫瘍条件が一定の基準内(小さな少数個の肝細胞癌)であれば移植のよい適応であることは一般的に受け入れられている。一方肝細胞癌は,その多くの症例で背景にB型またはC型肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎を伴っており,肝細胞癌に対する移植は単に癌治療のみならず,慢性ウイルス性肝炎に対する移植の是非という点からも検討されなくてはならない。これら慢性肝炎に対する肝移植の適応,治療方針は過去10年間で急速に変化しており,特にB型肝炎に対する移植の適応は,抗ウイルス薬の使用などにより禁忌からよい適応へと劇的に変化している。すなわち個々の論文のエビデンスレベルという問題以前に,肝移植による肝細胞癌の治療自体がこの10年間,また現在も大きく変化しつつあり,こうした状況では,エビデンスレベルの高い論文の結果により,research questionに対する推奨に至るという手順がややなじまない部分があることを考慮しつつ,ガイドラインを作成した。

一般に新しい治療はすべて実験的な段階から始められ,次に症例が積み重ねられて大まかなコンセンサスに至り,ランダム化割付試験の結果によるエビデンスの確立という段階は,相当の時間が経過して,治療法がある程度定着した後の最後の段階に行われる傾向がある。その意味で肝細胞癌に対する肝移植はまだ定着しつつある段階で, level 1bはもちろん2aの論文もほとんどないのが実状である。本稿で最も重要なresearch questionはおそらく切除可能な肝細胞癌に対して,肝移植は切除より優れているかどうかというものであろうが,これに対しては上記の理由により高いエビデンスレベルの論文に基づく推奨は現時点ではできなかった。

なお肝細胞癌に対する生体肝移植に関しては,2002年までの時点では論文によるエビデンスの集積がなく,今回のガイドラインはすべて脳死肝移植によるものであることを附記しておく。

 

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第3章:手術

第5節 肝移植

Resaerch Question. 32

肝移植前のTAEは有効か?

推奨

肝移植前にTAEを施行しても,術後の再発率が低下するというエビデンスは確立されていない。ただし抗腫瘍効果が認められた症例では予後の改善に寄与する可能性はある。カテーテル操作などによる動脈合併症は増加しない。

(グレードC1)

【背 景】

肝細胞癌症例に対する移植の際に,待機期間中の腫瘍の増大を防ぐため,あるいはダウンステージングによる適応の拡大もしくは予後の向上を目的としてTAEを施行する場合があるが,実際の予後に対する影響は不明である。またこれを行うことによる潜在的合併症についても考慮しなくてはならない。

【サイエンティフィックステートメント】

移植前のTAE施行が移植後の成績(oncologicalな)の向上に寄与するかどうかについては,RCTによる成績の比較がない現時点での評価は困難である。LF00435 3)Level 2b)は移植前TAEをルーチンに行っている施設において,肝機能不良例などによりTAEを施行しなかった群の成績と後ろ向きに比較した論文である。5年無再発生存率はTAE施行(54例)の57%と非施行群(57例)での59%で差は認めなかった。しかし3 cm超の大きな腫瘍での比較では,TAEにより腫瘍がダウンステージングした症例(19例)は,そうでなかった群(16例)や非施行例(22例)に比較して良好な5年無再発生存期間を認めた(それぞれ71%,29%,49%)。全症例としても,腫瘍壊死を認めた群はそうでなかった群やTAE非施行例に比較して良好な成績を得ている。同様の比較をしたLF00361 2)Level 2b)の論文でもTAE施行群(29例)と移植前未治療群(24例)の間に再発率の差を認めていない。しかしこの論文ではTAEによっても腫瘍の壊死が得られなかった症例が38%に上る。一方腫瘍の完全壊死が認められた群では,再発は認められなかったとして,TAEに加えてPEIを併用療法として施行することを推奨している。

移植前のTAE施行の際の一番の懸念は,カテーテル操作や注入された抗癌剤の影響による移植後の動脈合併症であるが,合併症を移植前TAE施行群と非施行群で比較した論文(LF00217 1)Level 2b)では,施行群の動脈合併症は6/47(13%),動脈血栓症は4/47(8%)であるのに対し,非施行群のそれらは68/1,154(6%),62/1,154(5%)と,両群間に有意差を認めなかった。LF00435 3)Level 2b)の論文でも,施行群に脾動脈を使った再建例がやや多かったが有意差はなかったと報告している。ただし技術的に熟練したradiologistによりTAEを施行されるのが前提であろう。

【解説】

上述のように,移植前のTAE施行が移植後の成績を上昇させるというはっきりとしたエビデンスはない。しかしこれらの論文でのTAEの奏効率は,本邦での標準的な成績に比べてかなり低いものと考えられ,TAEが効果的であった群では良好な成績を得たという結果も併せると,解釈に留意が必要である。さらにTAEの施行によっても移植後の動脈合併症は増加しない点,大きさなどで移植の適応の境界例で待機期間が長くなることが予想されるような症例では施行することを考慮してもいいのかもしれない。いずれにせよ合併症,有効率の点から熟達したradiologistによって行われる必要がある。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第5節 肝移植

Resaerch Question. 33

肝移植後の予後因子は何か?

推奨

脈管侵襲,次いで腫瘍の分化度が強い予後因子である。術前に評価できる因子として腫瘍径と個数が挙げられ肝移植の適応基準として使われているが,個数についてはあまり有意でないとするものが多い。腫瘍マーカーとしてAFPが予後因子となっていると主張する論文もある。TNMについては意見が分かれる。

(根拠の強さ:グレードB) 

【背 景】

肝細胞癌に対する肝移植後に,肝細胞癌が再発しやすい症例とそうでない症例を推定することは,移植の適応症例を決定するうえで,また優先順位をつけるうえで重要となる。これらの予後因子は,できれば術前に評価できるものが(画像診断などで)望ましい。

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌移植後の再発を規定する因子としては,以前より腫瘍の数と大きさが報告されてきており(LF00739 1)Level 4),現在これらにより選択する基準(ミラノ基準)が一般化されている(LF00540 2)Level 4)。これらの因子の上に,さらに摘出した肝臓の病理組織所見によって得られる因子も併せて予後因子を検討した論文での結果は比較的一致している。LF00017 3)Level 4)では脈管侵襲,腫瘍径,腫瘍の分化度が単変量解析での予後規定因子であったが,多変量解析では脈管侵襲のみが有意な予後規定因子となっていると報告している。LF00065 4)Level 4)の論文でも,脈管侵襲と腫瘍の分化度が有意な予後規定因子となっているとしている。この論文では,術前に腫瘍径が脈管侵襲と有意な相関を示したとしている。LF00026 5)Level 4)の論文では,古典的な数と大きさに加えて脈管侵襲と腫瘍の分化度,pTNM stageが単変量での予後規定因子となっているが,多変量解析で予後規定因子となっているのは分化度とpTNM stageであり,pTNM stageを除いた多変量解析では,分化度と腫瘍径が独立した予後規定因子となっているとしている。LF00342 6)Level 4)の論文でも,単変量解析では腫瘍径,腫瘍数,脈管侵襲,腫瘍の分化度が予後規定因子であったが,多変量解析での独立した因子は腫瘍の分化度のみであったとしている。一方,LF00094 7)Level 4)では腫瘍マーカー(AFP)を解析に加えている。単変量解析では数,脈管侵襲,衛星結節などが予後不良因子であり(分化度は解析に加えていない),これらに腫瘍径が大きく関与しているとしているが,多変量解析では脈管侵襲とAFPのみが独立した因子であるとしている。TNM stageに関してはLF00017 3)Level 4),LF00065 4)Level 4)では,Stage IVは有意に予後不良であるがI〜IIIの間には予後に差がないとしている。

【解説】

病理学的な脈管侵襲と腫瘍の分化度が,予後を規定する重要な因子としている報告が一般的である。しかしこれらを術前に正確に評価するには針生検などによる診断が必要であり,これにはneedle tract implantationの危険があることから,この方法を術前検査としてただちに推奨するには至らない。腫瘍径と腫瘍数がこれらに代わる代替のマーカーとして適応症例の選択基準に使用されてきたが,その意味で腫瘍マーカーは簡単に測定できる予後因子であり,これのもつ意味を今後検討する必要があろう。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第5節 肝移植

Resaerch Question. 34

肝移植(脳死全肝移植)は,肝細胞癌に対する治療法として肝切除より優れているか?

推奨

肝機能不良により切除の対象とならない症例に関しては,腫瘍数と腫瘍径に一定の基準を設けて肝移植の適応を決定すれば成績はよく,肝移植は切除よりも優れた治療法である。双方の治療が可能な症例では,少数個の小さい病変に限れば肝切除よりも肝移植の方が成績がよい可能性はある。大きな病変では肝切除の方が成績はよい。しかし移植期間中のドロップアウトの可能性まで含めて検討すると,切除のよい適応となる症例は肝移植の成績よりよい。

(グレードB)

【背 景】

肝細胞癌に対する肝切除は,術後の残肝異時多中心性再発という治療上の大きな欠点がある。さらに背景肝の肝炎または肝硬変に対する治療ではない。肝移植は理論的にはこれらを解決する治療法である。

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌に対する治療法として移植と切除をRCTにより,あるいはある程度症例をランダムに振り分けて比較をした検討はなく,答えも推測の域を出ない。

移植と切除治療を比較した初期の論文で(LF00706 1)Level 2a),今までは移植の適応ではないとされてきた少数個の小さな腫瘤(3 cm以下,2個以下)に関しては切除よりも移植の方が成績が良く,これらが移植のよい適応だと報告している。同様にLF00540 2)Level 4)の論文では肝機能の理由により,切除不能な症例に対して単発5cm以下か,多発でも最大径3 cm以下で3個以内という基準で移植を行うと4年生存率は80%になり,これは今まで報告されてきた肝細胞癌非合併症例に対する移植とほぼ同等の成績であり,現在の移植の適応のgold standardとなっている(ミラノ基準)。なおこれら適応の上限に関しては,数と大きさに関してもう少し適応を広げても成績は下がらないという報告もある(LF00063 3)Level 4)。少なくとも肝機能不良例で切除不可能な症例や,本来が末期肝硬変で肝癌を合併した症例に対しては,移植が唯一の根治を望める治療法であるが,大きさと数に関して一定の基準以内であれば,移植は推奨される治療法であるといえる。

移植と切除と双方が可能な場合に,どちらの治療法が推奨されるかについての結論ははっきりしない。LF00347 4)Level 2b)では個数の少ない(5個以下)症例では移植が勝るが,小さな(5 cm以下)腫瘤という条件では両者は同等の成績であり,術前にはっきりと同定できる腫瘤条件は腫瘤径であることから,肝細胞癌に対して移植が切除より優れているとは断定できないと結論している。LF00255 5)Level 2b)は,切除を行っている施設と移植を中心に行っている施設の成績を比べたものであるが,肝機能の悪い症例,5 cm以下で片葉に限局した症例では移植が勝るが,そうでない症例に関しての生存率は有意な差はなく,術死の多さや臓器不足を考慮すると,移植の適応は限定されるべきであると主張している。なお術死率に関しては,LF00347 4)Level 2b)とLF00706 1)Level 2a)ではやや切除症例に逆に多く認める傾向がある。LF00187 6)Level 2a)は,移植を肝細胞癌に対する第1選択として行い,切除は年齢や他疾患合併などにより移植の適応からはずれた症例で単発,脈管侵襲がなく,肝機能良好例(ただし肝硬変症例)に限って行われた施設で両者の成績を比較したという点でユニークなものであるが,生存成績は移植にやや有利であるが差はなく,無再発生存成績は移植が有意に良好であった。一方,脳死肝移植の場合には,待機期間中の肝細胞癌の進行や肝不全の悪化という問題は避けて通れない。その点を考慮したLF00299 7)Level 2b)の論文の施設では,単発5 cm以下の肝機能良好例では切除,切除不能例では移植という選択をして治療を行っているが,待機期間中のドロップアウトを含めたintention-to-treatによる解析を行い,切除例の中でも肝機能の良好な群と不良な群に分けて比較した場合,良好な群は移植の群よりも成績が良く,不良な群は移植に劣るという結果であったと報告している。

全体として双方の治療が可能である群に対して,移植治療は無再発生存率では有利であり,生存率では有利である傾向はあるもののはっきりとした差は認められない。この傾向は2〜3年を経過した後にやや顕著になる。また小型の肝細胞癌あるいは脈管侵襲がないという制限を越えた範囲での成績の比較では両治療群間に差はなく,また移植期間中のドロップアウトを考慮に入れると,移植は切除群のうち予後良好群(肝機能良好例)と不良群(肝機能不良例)の中間に位置する成績であろうことが推察される。

【解説】

肝機能条件から切除不可能な肝細胞癌に対しては,腫瘍数と腫瘍径に一定の基準を設けて移植の適応を決定すれば移植はよい治療法であると断言できるが,切除可能な症例に対して移植が優れているかどうかは,現段階では断言できるだけのエビデンスはない。少なくとも5 cmを超えるような,あるいは脈管侵襲が術前診断できるような症例に対しては,移植によっても切除治療以上の成績は望めない。脈管侵襲のない小型の肝細胞癌で,肝機能良好で切除も可能である症例に対してどちらが優れているかは,背景の肝炎ウイルスの種類(B vs. C)などによる成績の違いを含めて,今後のRCTなどの検討により明らかにする必要がある。これらの治療の実際上の選択はそれぞれの治療後の術死率により大きく左右されるが,成績は報告により大きく異なり(国,施設)留意すべき点と考えられる。

【参考文献】

 

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第3章:手術

第5節 肝移植

Resaerch Question. 35

肝移植後の再発様式は肝切除後のそれとどう異なるか,またそれに対する治療法は?

推奨

肝移植を受けた患者では再発までの期間が短く,あるいは再発後の腫瘍の進行が早いという報告もあるが逆の報告もある。再発巣に対して切除療法は有効である可能はある。

(根拠の強さ:グレードC)

【背 景】

肝移植後の肝細胞癌再発後の癌の進展形式および治療への反応を知ることは,移植の適応を検討するうえで,また全体としての予後を改善するうえで重要である。

【サイエンティフィックステートメント】

肝移植後の再発症例と肝切除後の再発症例で,腫瘍の倍加時間を画像上と腫瘍マーカー上で計測し比較した論文(LF00816 1)Level 2a)では,移植後のそれが40日程度であるのに対して,切除後のそれが270日程度であることから,移植症例では免疫抑制剤の使用により腫瘍の増大が加速されると報告しているが,いずれの群も症例数が数例程度であり,エビデンスレベルとして高いとはいえない。ただし倍加時間の個人差は大きく,移植症例で7〜65日,肝切除症例でも82〜560日であるとしている。ほかに再発様式を検討した論文(LF00306 2)Level 5)でも,再発症例での移植後再発までの期間は43〜3,204日(中央値441日)と広い範囲にわたる。なお再発は血行性転移がほとんどで,部位としては肝臓,肺,次いで骨の順であった。これらに対して未治療または非切除療法を施行した症例では,いずれも200日程度の予後で患者は死亡しているのに対し,肝肺転移症例に対して切除治療をし得た症例では長期生存例も存在する。

【解説】

免疫抑制剤を使用している移植患者において,移植後の再発後の腫瘍の進展がどのように修飾されるかについてのはっきりしたエビデンスはないが,今後の重要検討課題である。再発後も切除が可能であるような症例に対しては,積極的に切除治療を行うことにより良好な予後を得られる可能性がある。

【参考文献】

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