肝癌診療ガイドライン

 

第5章:肝動脈(化学)塞栓療法[TA(C)E]

はじめに

肝細胞癌の大部分は動脈血で栄養されている。肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization; TAE)は腫瘍を栄養する肝動脈内に塞栓物質(ゼラチンスポンジ,アイバロン)を注入し,栄養動脈を塞栓し腫瘍を阻血壊死に陥らせる方法である。抗癌剤を動注後,塞栓物質を注入する方法と塞栓物質と抗癌剤の混合液を注入する方法が1990年代初期までは施行された(LF03080 1)Level 1bLF07105 2)Level 4)。その後,油性造影剤(イオダイズドオイル:リピオドール)が腫瘍内に蓄積する事実がわかり,リピオドールと抗癌剤の混合液(リピオドールエマルジョン)注入(以下リピオドリゼーション)後塞栓物質を注入する化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization; TACE)が施行されるようになってきた(LF00534 3)Level 2aLF01899 4)Level 1bLF01920 6)Level 1aLF06881 7)Level 2a)。すなわちTACEは,血流支配にのっとった抗癌剤による化学療法と,塞栓物質による阻血効果を利用した治療法である。1990年代中頃までは,切除不能と判断された腫瘍濃染像を有する肝細胞癌の大多数はTA(C)E療法が施行されていた。その後種々の経皮的凝固療法の導入により,切除不能肝細胞癌でかつ経皮的凝固療法の対象外とされている腫瘍径3〜5 cm以上,3 cm以下4個以上の肝細胞癌がTA(C)Eの適応となっている施設が多い。使用するリピオドールや抗癌剤および塞栓物質量は腫瘍径や腫瘍濃染像の程度,腫瘍の占居部位,カテーテル先進部などにより決定される。

文献の選択

TA(C)E関連の文献検索で問題点が多数存在した。TA(C)Eの定義や方法,対象が施設間で著しく異なる論文が多い。代表的な事項を以下に列挙する。

1.Madden論文(LF02745 8)Level 1b)ではリピオドールと抗癌剤のエマルジョンを肝動脈内に動注し,塞栓物質(ゼラチンスポンジ,アイバロン)は注入されていない。この論文はTA(C)EのRCT論文として頻々引用されている。さらに本論文はメタアナリシスの対象にもなっている(LF01920 6)Level 1a)。
本邦では一般的に塞栓物質のみを肝動脈内に注入する方法をTAE,抗癌剤注入(リピオドールとの混合液,抗癌剤単独注入も含む)後塞栓物質を注入するのがTACEと定義されている。この定義に該当しない論文も散見された。なお,本邦においては前述,油性造影剤リピオドールとゼラチンスポンジの血管内投与は認可されていないが,全国の施設で広く使用されており,合併症や副作用の報告もほとんど認められていない。これらの物質の早急な保険適応の許可が待たれる。

2.カテーテルの挿入部位記載が不明なものが多く,固有肝動脈レベルからのTA(C)E症例がかなり多い印象を受ける。なお,同レベルからのTA(C)Eは非癌部肝組織の予備能低下を高率に惹起する注入法である。進行肝細胞癌の大部分は動脈血のみで栄養されている。一方,非癌部肝組織は動脈血と門脈血から栄養されている。したがって,動脈をTA(C)Eしても非癌部肝組織は門脈血流により壊死には陥らないであろうという理論背景でTA(C)Eは施行されてきた(LF07105 2)Level 4)。しかしながら,TA(C)Eされた非癌部肝組織の肝機能が悪化することは明白である。したがって,TA(C)Eされた肝領域内に非癌部肝組織の占める割合が多ければ,残肝予備能の低下は著しくなる。肝切除術における,切除範囲の決定と同じ考え方でTA(C)Eは施行されている。これらの事項と非塞栓領域内の非癌部肝組織の量と質,肝細胞癌の肉眼型(血流の多寡)および全身状態を考慮してTA(C)Eの適応および禁忌は決定されるべきである。しかしながら,このような観点からTA(C)Eの適応と禁忌を分析したエビデンスレベルの高い論文は認められない。

3.リピオドールエマルジョンの使用量がきわめて多い施設(10 ml以上)のRCT論文が多い(LF02332 9)Level 1bLF03734 10)Level 1bLF01899 4)Level 1b)。抗腫瘍効果は期待できるが,残肝予備能の低下や肺合併症などの増加も著しいものと考えられる(LF05751 5)Level 2b)。

4.繰り返し施行するTA(C)Eの時期がまちまちである。RCT論文では2〜3カ月の短期間に繰り返し施行した論文が大多数である(LF02313 11)Level 1bLF02332 9)Level 1bLF02745 8)Level 1bLF02959 12)Level 1bLF03734 10)Level 1b)。

5.肝細胞癌は他臓器癌と異なり予後因子として腫瘍進展度と残肝予備能の2つの因子が存在している。Okudaの分類は両者を加味した分類で,全世界で広く用いられる肝細胞癌の分類である(LF00984 13)Level 2b)。3群に分類され,stage IIIは最も予後不良な群である。このOkuda stage IIIはRCT論文では適応外となっているものが多いが,stage IIIに相当するHCCは種々の進行度のものが含まれており,さらなるステージの細分化が必要と考える。6段階に分けられたCLIP scoreなどによる検討が待たれる(LF03595 14)Level 4)。

6.TA(C)Eの対象となった肝細胞癌は肝切除術や経皮的凝固療法の適応がないものが大多数である。したがって,TA(C)Eと他治療法との治療成績の比較には,すでにbiasがかかっているものと考えられる。

 注:TA(C)Eとは抗癌剤の肝動脈内注入の有無を問わず,肝動脈を塞栓物質で塞栓する肝動脈塞栓術の総称である。

参考文献

 

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第5章:肝動脈(化学)塞栓療法[TA(C)E]

Research Question. 44

どのような症例がTA(C)Eのよい適応か?

推奨

TA(C)EはOkuda分類I,II,Child A,Bの進行肝細胞癌(手術不能で,かつ経皮的凝固療法の対象とならないもの)に対する治療として推奨される。化学塞栓される非癌部肝容積の非癌部全肝容積に占める割合と残肝予備能を考慮したTACEが推奨される。高ビリルビン血症のない肝細胞癌破裂症例の治療には救急TA(C)Eは有効な治療法である。

(グレードA)

【サイエンティフィックステートメント】

TA(C)Eが治療対象となり得る肝細胞癌は肝動脈造影像で腫瘍濃染像を有する,いわゆる古典的肝細胞癌(中分化,低分化肝細胞癌)もしくは一部のearly advanced肝細胞癌である(LF06299 1)Level 4LF06687 2)Level 4)。1990年代中頃までは切除不能と判断された肝細胞癌の大多数はTA(C)E療法が施行されていた(LF07105 3)Level 4)。最近では切除不能肝細胞癌でかつ経皮的凝固療法の対象外とされている進行肝細胞癌がTA(C)Eの適応となっている(LF06283 4)Level 1bLF06299 1)Level 4)。

1990年代に前述進行肝細胞癌に対するTACEと対症療法群を比較したRCTが5編報告された(LF02313 5)Level 1bLF02332 6)Level 1bLF02745 7)Level 1bLF02959 8)Level 1bLF03734 9)Level 1b)。いずれも抗腫瘍効果(腫瘍縮小,AFP低下,門脈腫瘍塞栓出現頻度低下など)は認めるも,予後向上には何ら寄与しないとの報告であった。これらの対象群はChild CやOkuda分類IIIグループを含んだものも存在し,TACEは選択性のないほぼ全肝に施行されたものであった。定期的に全肝をTACEすることにより,早期肝不全死した症例がこのような結果をもたらしたものと考えられた(LF01920 10)Level 1aLF05818 11)Level 2a)。

2000年代に入りRCTが2編報告され,TACEが対症療法に比し前述の抗腫瘍効果および生存率向上に寄与すると述べている(LF01899 12)Level 1bLF06283 4)Level 1b)。進行肝細胞癌に対するTA(C)E治療の有用性に関するエビデンスレベルの高い論文は認めるが,適応基準に関するエビデンスレベルの高い論文は存在しない。肝細胞癌破裂症例は日本肝癌研究会のstage分類では,最も進行したstage 4に分類されている。肝細胞癌破裂症例に対する救急TA(C)Eは止血効果も高く,有用な治療法である(LF06783 13)Level 4)。

【解 説】

進行肝細胞癌に対するTACEは抗腫瘍効果は認めるものの,生存率には何ら寄与しないとのRCT(LF02313 5)Level 1bLF02332 6)Level 1bLF02745 7)Level 1bLF02959 8)Level 1bLF03734 9)Level 1b)が1990年代に発表された。2000年代に入り,進行肝細胞癌に対するTACEは予後向上に寄与するとのRCTが2編認められる。この2編(LF01899 12)Level 1bLF06283 4)Level 1b)はいずれもOkuda分類III群,Child C群は対象外とした論文である。うち1編は門脈内に腫瘍塞栓を有する症例をTA(C)E群40例中9例,コントロール群39例中12例を含んだ論文である。1990年代のRCTに比して2000年代のRCTのTACE法がより超選択的で,非癌部肝組織の障害が少ない化学塞栓が施行されている。

Cammaの5つのRCTのメタアナリシスでもoverallの2年死亡率は有意にTACEの方が少ないことを述べている(LF01920 10)Level 1a)。さらにRCTはもう少しTA(C)Eの方法(定期的か否か,カテーテルの選択性,使用薬剤)や腫瘍進展度(腫瘍の数と径など)を統一して行うべきであると述べている。

前述RCT論文での進行肝細胞癌に対するTACE禁忌の病態としては,performance status 3以上,高齢者(75〜80歳以上),非代償性肝硬変合併(消化管出血,難治性腹水,肝性脳症,細菌感染),高度血液凝固系障害,腎障害,などを有する症例である(LF02313 5)Level 1bLF02332 6)Level 1b)。腫瘍側からみると,脈管内腫瘍塞栓(特に門脈内腫瘍塞栓)を有する症例は禁忌とする説が多い(LF07105 3)Level 4)。

【参考文献】

 

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第5章:肝動脈(化学)塞栓療法[TA(C)E]

Research Question. 45

TACEで化学塞栓すべき脈管は?

推奨

腫瘍部を栄養する動脈のみならず併走する門脈枝をも化学塞栓し,非癌部肝組織の障害の少ない超選択的TACEが推奨される。

(グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

肝細胞癌は動脈血のみで栄養されるといわれてきたが,門脈血も腫瘍の栄養に関与している症例も存在することが明らかとなった。従来のTA(C)Eで腫瘍の完全壊死が得られないのは,この門脈血関与部分の腫瘍(高分化型,被膜外浸潤部,被膜内)部が大部分であることが判明している(LF00645 1)Level 4LF04041 2)Level 4)。肝細胞癌を栄養する動脈枝のみならず併走する門脈枝へも超選択的に,まず,リピオドールエマルジョンを注入し,さらに前述の塞栓物質で同部の動門脈枝を化学塞栓する方法が理想である。TACE後のCTで腫瘍とその周辺を取り囲むようなリピオドールの集積が認められる腫瘍は再発が少ない(LF02651 3)Level 4LF06299 4)Level 4LF06558 5)Level 2b)。

【解説】

近年のカテーテル,ガイドワイヤーシステムやアンギオCTなどの撮影機器の進歩により,腫瘍を栄養する動脈枝の同定および超選択的カテーテル挿入が可能となった。その結果,超選択的に大量の化学塞栓物質を栄養動脈のみならず,併走する門脈枝へも注入することが可能となった(LF02651 3)Level 4LF06687 6)Level 4)。これらのカテーテル挿入技術の進歩は抗腫瘍効果の向上のみならず,非癌部肝組織の機能温存をもたらし,TACEによる予後向上は著しいものがある(LF06299 4)Level 4LF06687 6)Level 4)。超選択的カテーテル挿入下TACEの生存率は良好な成績が大多数であるが,Level 1,2,3の論文は認められない。

【参考文献】

 

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第5章:肝動脈(化学)塞栓療法[TA(C)E]

Research Question. 46

肝動脈化学塞栓療法にリピオドールと抗癌剤のエマルジョン注入(リピオドリゼーション)は必要か?

推奨

現行のTACEでは,残肝予備能と化学塞栓される非癌部肝組織の領域を考慮したリピオドリゼーションが推奨される。

(グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

リピオドリゼーション単独治療症例と,リピオドリゼーション後ゼラチンスポンジによる化学塞栓(TACE)症例の切除肝での対比検討で,病理学的に前者に比して後者が有意に壊死率が高いことが立証されている(LF03042 1)Level 4LF06059 2)Level 4)。進行肝細胞癌への本治療に関するメタアナリシスではTACEとTAE間には予後に差がなかったと結論している(LF01920 3)Level 1a)。進行癌に対して抗癌剤使用群の術後死亡率が高いことと,カテーテル先端の選択性が問題であることを指摘している(LF01899 4)Level 1bLF01920 3)Level 1a)。なお,TACE症例では,抗癌剤は腫瘍内に2週間は高濃度に停滞することも証明されている(LF03042 1)Level 4LF04041 5)Level 4)。リピオドリゼーション後のCT検査にて小さな衛星結節や肝内転移巣が発見されるのも利点のひとつである(LF06299 10)Level 4LF04041 5)Level 4)。

【解説】

肝機能のよい進行癌や小型肝細胞癌症例での,リピオドリゼーション併用TACE施行後の予後は良好で,同法施行後切除標本の病理学的検討では抗腫瘍効果も高い(LF02759 6)Level 2b,LF02959 7)Level 1bLF03042 1)Level 4LF06059 2)Level 4LF06558 8)Level 2bLF06604 Level 2b)。Cox's proportional hazard modelを用いた生存率では,リピオドリゼーション併用の有無で有意の差を認めている(p<0.01)(LF06604 9)Level 2b)。メタアナリシスでは,進行肝細胞癌に対するTACEが,TAEに比して生存率が良好であるとの成績は得られなかった(LF01920 3)Level 1a)。その原因としてRCT論文のリピオドリゼーションは,ほぼ全肝に施行されており,非癌部肝組織の障害が生存率低下の一大原因となっている可能性も高いことが推察されている(LF01920 3)Level 1a)。

【参考文献】

 

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第5章:肝動脈(化学)塞栓療法[TA(C)E]

Research Question. 47

リピオドールと抗癌剤の混合液(リピオドールエマルジョン)に使用する抗癌剤は何が選択されるべきか?

推奨

現在は症例により抗癌剤の感受性が異なる感もある。特定できる薬剤は見出せない。

(グレードC1)

【サイエンティフィックステートメント】

TACEに際し,リピオドールエマルジョンとして使用される抗癌剤はドキソルビシン,エピルビシン,マイトマイシンC,シスプラチン,ネオカルチノスタチンなどである(LF02651 1)Level 4LF03653 2)Level 1bLF03756 3)Level 2aLF04041 4)Level 4LF06299 5)Level 4LF06881 6)Level 2a)。これらの抗癌剤の組合せによる多剤併用施設が多い。TACE後,切除肝の病理学的検討ではシスプラチン使用例の主腫瘍の75%,衛星結節の69%,脈管侵襲の78%,被膜外浸潤部の40%が完全壊死を認めている(LF04041 4)Level 4)。シスプラチン使用施設が増加の傾向にある(LF06324 7)Level 2b)。しかし前述した超選択的TACE症例では,他の薬剤でもほぼ同様の壊死率を示している報告も多数存在する(LF06687 8)Level 4LF06299 5)Level 4)。嘔気,嘔吐の副作用がシスプラチンには多い。

【解説】

2種類の異なる抗癌剤(エピリビシンとドキソルビシン)を使用したリピオドールエマルジョン注入後,ゼルフォームでTACEした生存率のRCT論文では(LF03653 2)Level 1b),両者間に副作用の差は認めず,低リスク群では後者の生存率が良好であった(p=0.018)が,全体では両者間に差は認めていない。Low doseシスプラチンとドキソルビシンを用いたリピオドールエマルジョン注入後,塞栓(ゼルフォーム使用,前者31%,後者50%)した症例での生存率比較では,前者が後者に比して有意に良好であった(p<0.05)(LF06324 7)Level 2b)。

【参考文献】

 

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第5章:肝動脈(化学)塞栓療法[TA(C)E]

Resaerch Question. 48

再TA(C)Eの時期の選択は?

推奨

血流豊富な腫瘍出現,腫瘍マーカーの上昇および腫瘍径が増大した時点で再TA(C)Eは施行されるべきである。

(グレードB)

【サイエンティフィックステートメント】

1991年,3カ月に1回の定期的TAEが有効で,繰り返しTAEを続行することで完全壊死症例が出現することをIkedaらが報告した(LF06751 1)Level 4)。その後,進行肝細胞癌に対する2〜3カ月毎の定期的TACEと対症療法のRCTが数編,有名誌に掲載され話題となった(LF02313 2)Level 1bLF02332 3)Level 1bLF02745 4)Level 1bLF02959 5)Level 1bLF03734 6)Level 1b)。これら5つのRCT成績では,抗腫瘍効果は認めるも,生命予後の向上には何ら寄与しないという結論であった。一方,腫瘍増大時の超選択的再TACEの最近の成績では,3年生存率78%,77.1%(LF06299 7)Level 4LF06687 8)Level 4)の報告も認められる。

【解説】

腫瘍増大もしくは腫瘍マーカー上昇時に再TA(C)Eを施行した施設の生存率が良好な報告が多い。しかしながら,2〜3カ月毎短期間での定期的再TA(C)Eと腫瘍増大時での再TA(C)E間のRCT成績は認めない。Ernstら(LF05818 9)Level 2b)は2カ月に1回,少なくとも3回の定期的TACEと,腫瘍が増大した時点での再TACEを遡及的に比較検討した。前者は後者に比して合併症が多く(p<0.001),累積生存率が悪い(p<0.001)との成績を得ている。著者らはできるだけ腫瘍増大時に超選択的再TACEを施行することが重要であると述べている。

【参考文献】

 

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第5章:肝動脈(化学)塞栓療法[TA(C)E]

Reserach Question. 49

TA(C)Eと他治療法の併用療法は有効か?

推奨

進行肝細胞癌症例ではTA(C)Eを中心とした各種治療との併用治療が今後試みられるべきである。3 cm以上の肝細胞癌ではTA(C)EとPEIの併用治療が推奨される。

(グレード B)

【サイエンティフィックステートメント】

切除不能進行肝細胞癌で前述経皮的凝固療法の対象とならない肝細胞癌に対して,TA(C)Eと種々の治療法との併用療法成績が存在する。経門脈性門脈内エタノール注入とTACEの組合せでは,5,6年生存率51%ときわめて良好な成績が報告されている。切除肝および剖検肝の病理組織学的検索で9主腫瘍中77.8%が完全壊死を示し,塞栓肝内の9衛星結節中8結節は完全壊死に陥っていた(LF01400 1)Level 4)。大型肝細胞癌に対するTACE単独とTACE+PEI(経皮的エタノール注入療法)の比較検討でも,後者が再発率および画像上の完全壊死ともに有意に良好な成績が得られている(LF01754 2)Level 2aLF01635 3)Level 1b)。平均腫瘍径5 cmの肝細胞癌で累積3年生存率85%,局所再発率6%であった(LF01754 2)Level 2a)。経皮的レーザー型凝固療法後TACEを組み合わせた大型肝細胞癌に対する治療成績も良好である(LF01248 4)Level 4)。凝固療法で生き残っている腫瘍細胞をTACEで壊死に陥らせ,6カ月以上の追跡で局所再発はわずかに3例である。その他,平均腫瘍径10.3 cm,門脈内腫瘍塞栓を有する5症例を含む25例の肝細胞癌に対し,リニアック局所照射9例と,TACEと局所照射の併用療法を施行した16例の対比成績を報告している(LF01315 5)Level 2a)。TACEと照射の組合せの2年生存率は55%で,局所再発率はわずかに12%ときわめて良好な成績である。

【解説】

進行肝細胞癌に対するTA(C)Eを中心とした種々の併用治療成績は,TA(C)E単独治療成績に比して良好なものが多い。3 cm以上の肝細胞癌症例では,繰り返すTACE単独治療症例に比してTACE+PEIの併用療法症例の方が治療効果良好であるとのRCT論文1編(LF01635 3)Level 1b)とコホート研究論文1編(LF01754 2)Level 2a)を認める。前述した併用治療の適応はいまだ確立されていない。

【参考文献】

 

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第5章:肝動脈(化学)塞栓療法[TA(C)E]

Reserach Question. 50

小型肝細胞癌に対するTA(C)Eの適応はあるのか?

推奨

多発性小型肝細胞癌および肝動脈末・枝が栄養する結節型の血流豊富な肝細胞癌はTA(C)Eの適応となるものも存在する。

(グレード C1)

【サイエンティフィックステートメント】

外国での小型肝細胞癌に対する肝移植,肝切除,TA(C)E,PEIの治療成績の比較では,肝移植の成績が良好であるが,他治療法間には生存率に差が証明されていない(LF00263 1)Level 2aLF00421 2)Level 2bLF00534 3)Level 2a)。その他,単発小型肝細胞癌の肝切除成績はTA(C)Eに比して有意に良好であるが,多発病変では,その差がないとの報告も認められる(LF00421 2)Level 2bLF06085 4)Level 2b)。小型肝細胞癌に対するTA(C)E後肝切除がなされた症例の壊死率をみると完全壊死は80%前後の報告が多く,完全治癒は得られないものが存在することがわかる(LF00645 5)Level 4LF04041 6)Level 4LF06299 7)Level 4LF06687 8)Level 4)。ちなみに,これらの施設でのTA(C)E後の局所再発率は3年で30%前後である。残存癌は腫瘍内部にはほとんど認められず,存在部位は被膜外に多く,一部被膜内に存在している。前述した門脈血の同部位への関与がTA(C)Eの最大の障害物となっている。小型肝細胞癌に対するTACEでは,局所再発も認められるが,超選択的TACEでは,3年生存率77%,4年生存率67%などの報告もある(LF06299 7)Level 4LF06687 8)Level 4)。

【解説】

3 cm以下の小型HCCの大多数は肝切除術や経皮的凝固療法が施行されている。TA(C)Eの適応となり得る可能性のある高血流の小型肝細胞癌のTA(C)Eと他治療法とのRCT論文は認められなかった。小型単発肝細胞癌ではTA(C)Eに比して他治療法の方が予後良好な報告が多いが,多発小型肝細胞癌やAFP 400 ng/ml以上の症例ではTA(C)Eと他治療間の生存率に差がないとの論文も認められる(LF00421 2)Level 2bLF06085 4)Level 2b)。

【参考文献】

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