一般社団法人 日本肝臓学会

理事長挨拶

一般社団法人 日本肝臓学会理事長 竹原徹郎

竹原徹郎

日本肝臓学会は、肝臓学の研究の推進と肝疾患診療の向上を目的に1965年に設立された学術団体です。肝臓は生体内で最大の臓器であり、私たちが健康に生活していくうえで不可欠の働きをしています。肝炎ウイルス、飲酒や過食などの生活習慣、薬物など様々な原因で障害が起こり急性あるいは慢性の肝疾患を引き起こしますが、肝臓は「沈黙の臓器」であり、疾患が進行するまでなかなか気づきにくいという特徴があります。

肝臓学会は、日本の国民病である肝炎・肝がんの診療・研究、そして若手医師・研究者の育成に尽力してきました。肝疾患の診療を全国どこでも高いレベルで受けられるようにするには、優れた専門医の育成が重要であり、各種ガイドラインの整備が必要です。肝臓学会では1989年から認定医制度を開始し、2002年には肝臓専門医に呼称変更し、現在機構認定の専門医制度開始に向けて準備を行っています。ウイルス肝炎、肝がん、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの診療ガイドラインを発刊し、これらは日本全国の施設で活用されています。また、市民公開講座の開催等による一般の方々への疾患啓発、国の施策への提言も積極的に行っています。

この四半世紀にわたるC型肝炎に対する診療と研究の進歩には目を見張るものがありますが、安全で有効率が高い抗ウイルス治療が普及するなかで、ウイルス排除後の肝疾患が新たな問題としてクローズアップされてきています。肝がんを早期に発見し、早期に治療するという日本の肝がんの診療レベルは世界的にも傑出したものがありますが、最近では分子標的治療薬の選択肢も増え、進行肝がんに対する治療も格段に進歩しています。また、各種肝疾患の共通の終末像である肝硬変の治療に関しても、この10年間に多くの新規治療薬が登場しています。患者さんの真の予後改善に向けた総合的な対策が必要です。また、最も頻度の高い肝疾患である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、いまだウイルスを完全に排除することができないB型肝炎、アルコールあるいは薬物性肝障害など、学会が取り組むべき課題は山積し、かつ多様化しています。

このような新たな状況のなか、これからの四半世紀を見据え、わが国の肝臓研究・肝疾患診療をさらに発展させるとともに、社会貢献に努めてまいります。会員および市民の皆様におかれましては、より一層のご協力・ご助力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。