一般社団法人 日本肝臓学会

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奈良宣言2023 Stop CLD

「奈良宣言2023」とは

本宣言は、特に一般的な健康診断でも肝機能検査として血液検査で広く測定されているALT値を指標として、健康診断等でALT>30であった場合、まずかかりつけ医等を受診し、かかりつけ医によって、その原因が検索され、必要があれば、消化器内科等の専門診療科で精密検査を受け、かかりつけ医と専門医の診療連携による肝疾患の早期発見・早期治療に繋げることを目的とします。

「奈良宣言2023」の背景

近年、B型肝炎やC型肝炎といったウイルス性肝疾患は、劇的な治療の進歩を遂げました。しかし肝硬変や肝臓がんに進行してから初めて診断されるケースが現在も少なくはありません。特に最近はウイルス性肝疾患による死亡者が年々、減少傾向にある一方で、生活習慣病を基盤とするいわゆる脂肪肝(非アルコール性脂肪肝炎(NASH)やアルコール性肝疾患)を基礎疾患とする肝疾患が年々増加していることは、本学会でも多くの報告によって警鐘が鳴らされています。そこで「肝疾患の早期発見・早期治療のきっかけ」としてALT>30をひとつの目安としました。

Chronic liver disease: CLDとは
慢性肝臓病の英語のChronic(慢性)+Liver(肝臓)+Disease(病気)の頭文字であり、肝炎ウイルスや脂肪肝、アルコール、免疫異常等の何らかを原因として肝臓が長期にわたり炎症とその修復機転で起こる線維化によって肝臓が持続的な障害を生じている状態を指します。病態進行により肝硬変や肝がんの成因となります。

「ALT>30」とする根拠および利点

シンプルで健診や一般診療で汎用されている項目です。
英文も含めて基準値に関する文献が多数あります。
我が国の特定保健診査(特定健診)および人間ドック学会の基準値は ALT30 以下です。
特定健診や人間ドック学会の基準値は日本消化器病学会肝機能研究班意見書に基づいて決定されています。

なお、今回の宣言では日本臨床検査標準協議会の基準範囲共用化委員会が発表している「日本における主要な臨床検査項目の共用検査範囲」では基準値内の症例も対象となります。また、健康成人の約15% はALT値30超えを満たすとの報告があります。このため、この宣言がかかりつけ医における診療に影響を与える可能性があり、宣言に先行して、厚生労働省健康局、日本医師会、関連医学会などには、事前に連絡を行っています。

かかりつけ医の先生方へ

ALT>30の症例は肝生検を行うと、ほとんどの場合に肝組織に炎症細胞浸潤が認められるとされています。
したがって、フロー図で専門医に紹介するケースに当てはまらないからと言ってその後のフォローが不要であるとは限らないことにご留意ください。
例えば、肥満や糖尿病・脂肪肝合併例は肝線維化を伴う進行例(肝がん高リスク群)を見落とさないことを目的としています。現在当てはまらない症例も将来的には肝線維化が進行する可能性がありますので、かかりつけ医において定期的なフォローをお願い致します。

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