Q&A
ドナー選定
①適応
- Q1.移植術前にドナー候補者のみでの外来初診は可能でしょうか?
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A1.まずは移植施行施設にご相談ください。
可能であれば、ドナー候補者とともに、移植施行施設での肝移植についての説明を聞くことができる方も来院して下さい。
患者(レシピエント)の状態が来院不能と判断される場合は、レシピエントについての診療情報提供書(紹介状)をご用意下さい。 - Q2.ドナー候補者は外来初診時に続柄の証明書を持参しなければならないでしょうか?
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A2.移植施行施設での肝移植についての説明を聞いていただいた後に、ドナー候補者が変更となる場合もありますので、初診日にはドナー候補者ご自身の公的身分証明書(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)をご持参いただき、続柄証明書は後日の提出で構いません。ただし、急性肝不全(昏睡型)などで移植施行までに時間的猶予が少ないと予想される場合には、初診当日にあらかじめご用意をお願いすることがあります。
②術前検査
- Q1.ドナー術前検査として造影CTは必須とありますが、造影剤アレルギーがある場合の対応はどのようにしたらよいでしょうか?
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A1.明らかなヨード系造影剤アレルギー歴がある場合、ドナー術前検査として造影剤を用いることができません。したがいまして、原則、他のドナー候補者を選定することとなります。
- Q2.ドナー術前検査費用についてはどのように請求がありますか?
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A2.当該患者(レシピエント)に対して生体肝移植が施行されれば、ドナー術前検査費用については、レシピエントにかかった医療費とともに、レシピエントに請求されます。手術、手術前後の入院費用も同様に、レシピエントに請求されます。
肝移植が施行されなかった場合、ドナー候補者の自己負担となります。この場合諸検査、その他要した費用については、実費(自費診療相当額)の請求が発生します。 - Q3.たとえば2人(以上)ドナー候補者として検査の申し出がある場合、検査費用はどのようになりますか?
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A3.複数名のドナー候補の同時検査を希望された場合、肝臓を実際に提供したドナー(候補)について要した費用は、レシピエントに費用請求されます。肝臓を実際に提供しなかった候補に対して行った検査につきましては、それぞれのドナー候補にご負担いただき、実費(自費診療相当額)の請求があります。
③禁忌・相対的禁忌
- Q1.ドナーの相対禁忌として脂肪肝とありますが、肝生検は必須でしょうか?
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A1.肝生検は必須ではありません。移植施設において他の検査(エコー、MRIなど)の結果により、肝生検が施行されることはあります。
- Q2.ドナー候補者の小児期の既往疾患がある場合は、ドナー候補として禁忌となりますか?
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A2.疾患とその治療歴、さらにドナー候補者の現在の症状によります。
例えば、小児喘息の既往がある場合、移植施設において専門科受診を含めて精査し、肝切除が耐術可能と判断されればドナー手術は行われます。 - Q3.ドナー検査中にドナー候補者が悪性腫瘍と診断された場合にはその後の検査はどのようになりますか?
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A3.ドナー候補としての検査は中止となります。ドナー候補者に説明のうえ、治療を希望する医療機関へ紹介します。
- Q4.ドナーの禁忌に悪性腫瘍の記載がありますが、除外基準として術後年数などの決まりはあるのでしょうか?
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A4.術後年数についての明確な基準はありません。
再発の可能性が今後極めて低いと考えられる状況において、移植施設の倫理委員会・肝移植適応検討委員会などで検討され、ドナー候補者としての適否が判断されます。
④グラフト選択
- Q1.ドナー、およびレシピエントの標準肝容積はどのように計算されますか?
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A1.標準肝容積の算定にはいくつかの計算式が提唱され、健常な人における標準肝容積を算出する式に基づいて計算することがあります(Urata K, et al., Hepatology. 1995;21:1317-21.)。レシピエントに必要な肝容積につきましては、前述の標準肝容積に対するグラフト重量や、肝臓グラフト重量対レシピエント体重比を計算し、決定する方法があります。
- Q2.様々な肝切除範囲によるグラフト選択がありますが、ドナー手術を受けた方の肝臓はどのように再生しますか?
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A2.肝臓の再生は術後早期から始まり、術後10日で3割、術後6か月までに7割程度の容積増加が認められることが報告されています(Kawasaki S, et al., Lancet. 1992;339:580-1., Lee SG., J Korean Med Sci. 1998;13:350-4., Kamel IR, et al., Abdom Imaging. 2003;28:53-7.)。残肝が再生・肥大することにより、術前肝容積近くまで回復しますが、元の解剖学的構造には戻りません。
⑤手術
- Q1.ドナーの入院・手術費用はどのくらいかかりますか?
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A1.患者(レシピエント)に生体肝移植手術が施行された場合、その手術におけるドナーの検査・入院・手術費用はレシピエント治療費に合算され、レシピエントに請求されます。したがって手術前後の期間に当該ドナーが負担する費用はありません。
レシピエントまたはドナー候補者に何らかの事情が発生し移植手術が行われなかった場合は、ドナー候補者に行われた検査費用が、ドナー候補者へ請求されます。請求金額は、症例毎の検査項目により異なります。
⑥合併症・予後・死亡例
- Q1.ドナー手術後合併症発症時の治療費負担はどのようになりますか?
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A1.患者(レシピエント)に生体肝移植手術が施行された場合、その手術におけるドナーの検査・入院・手術費用はレシピエント治療費に合算されます。したがって術後退院までの費用はレシピエントに請求されます。
- Q2.肝切除後肝機能の回復にはどのくらいの期間を要しますか?
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A2.左葉系グラフトの場合には、術翌日から翌々日には肝機能の回復が認められます。右葉系グラフトの場合には、切除容積が大きくなるため、個人差はありますが、回復に3-5日程度の時間を要します。
- Q3.ドナー(候補)の仕事復帰予定はどのように計画していただけばよろしいでしょうか?
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A3.施設によって若干異なるとは思われますが、手術から退院までは10〜14日(2週間)程度です。退院時には身の回りのことはできますが、自宅療養となります。仕事復帰は、仕事内容にもよりますが、1か月〜3か月程度の療養期間をお考えいただくよう、ドナー手術を受けられた方にはお願いしています。
- Q4.ドナー術後の退院後フォローアップはどのようにされるでしょうか?
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A4.肝移植施行施設にはドナー外来があり、同外来に受診していただきます。
⑦脳死肝移植
- Q1.脳死移植のドナー登録はどのように行うことができますか?
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A1.日本臓器移植ネットワークから臓器を提供の意思表示の登録が可能です。15歳以上での意思表示が有効とされます。実際の提供につきましては、本人の拒否の意思が無ければ、15歳未満でも家族の承諾があれば提供が可能です。意思表示に費用は一切かかりません。
また臓器提供意思表示については、臓器提供意思表示カード、運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなどに記載することができます。
その他、意思表示、意思登録につきましては日本臓器移植ネットワークFAQもご参照ください。 - Q2.患者(レシピエント候補者)の脳死肝移植待機登録はどのように行われますか?
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A2.脳死肝移植実施認定施設(本邦における認定施設)において、患者の精査が行われ、肝移植適応と判断されたのちに登録が行われます。
患者(レシピエント候補者)が移植を希望される施設を受診し、精査のうえ移植適応と判断されれば登録可能となります。登録は、移植施設にて医学的データーが入力され、患者(もしくは、患者家族)により日本臓器移植ネットワークに登録料(30,000円)がコンビニエンスストア、もしくは郵便局にて支払われた(住民税の非課税世帯は、所定の手続きにより登録料が免除されます)ことが確認された時点で行われます。
移植待機希望登録については日本臓器移植ネットワークもご参照ください。